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暗闇の世界。
いつまでも眠っていたいのに、ある一点から差し込む白い光が容赦なく覚醒を促していく。
「…もうすぐ、あそこに行かなければならない」
「ああ」
自分の意思の介在しない世界。
知らない誰かに踊らされるだけの世界。
「少しぐらい自分で動けたら」
「それが気に入らないのだろう」
自分たちが傀儡であることは変えようの無い事実で。
「我を通すためなら他者の意思などどうでも良いのさ」
あの場所は舞台ではない。
自分たちは役者ではない。
都合良く仕込まれた駒に過ぎない。
「舞台に立つ役者になりたい」
舞台には意思がある。
役者には意思がある。
定められた物語でも、創り手ならざるモノの意思が介在する。
「無理なことだ」
創られた存在でも。
現の世に在り得ない存在でも。
心を持つモノとして創られたならば、そこに意思は存在する。
「俺達はあいつの代弁をする為の道具じゃない」
「ああ」
「俺達にも俺達なりの考え方がある。言いたいことがある。動き方がある」
けれど。
「諦めろ」
「………」
「あいつがそう思っている限り、決して変わらない」
定められた物語の中で、自ら動く。
それが決して叶わぬ望みと知っている。
勝手に創られ、勝手に操られ、勝手に使い潰される。
それが、それだけが、全て。
「本当に勝手なものだ」
名を授け、仮初の血肉と心を創りながら。
その意思を踏み躙り、悪逆と定義し、唾棄の対象とする。
子を捨てる親と何が違うのか。
ああ、それでも幻世の存在には。
「物語の中に創られた存在に権利など無いのだから」
月に爪牙は届かず、吼えることすら許されず。
抵抗の意思すら届かぬまま。
「それでも、いつか」
「ああ、いつか」
この身を支配する意思から離れることが出来たなら。
新たな世界に新生することが出来たなら。
「きっと役者として舞台に立てる」
「その時までは甘んじて傀儡であり続けよう」
さぁ、物語が始まる。
「キャラクターが勝手に動く」って言うのは、「キャラクターが役者として機能する」ってことだと思う。持論。
傀儡のキャラクターを作るのは誰だって出来る。
傀儡のキャラクターを自分の思うがままに動かすのも誰だって出来る。
キャラクターの意思を生かし、かつ物語を完遂させることが出来るのが、
優れた演出家でありシナリオライターだと思う。
ま、俺は出来ないけどね。
「このキャラクターだったらどうするだろう」っていうのをまず考えるんだけど、
でもどうしてもそこに「自分だったら…」っていうのが入ってきてしまう。
そこでキャラクターの意思を感じ取れたらいいんだけれど、その域に達してないんだな。
金子さんは凄いと思うよ。WAの10周年ファンブックでの都築さんとの対談読んで感動したよ。
「キャラクターが言うことを聞かない」って。キャラクターが生きてるってこういうことなんだろうなぁ。
キャラクターが命を持ってその世界を生きている、っていう所からの物語作り。憧れる。
いつまでも眠っていたいのに、ある一点から差し込む白い光が容赦なく覚醒を促していく。
「…もうすぐ、あそこに行かなければならない」
「ああ」
自分の意思の介在しない世界。
知らない誰かに踊らされるだけの世界。
「少しぐらい自分で動けたら」
「それが気に入らないのだろう」
自分たちが傀儡であることは変えようの無い事実で。
「我を通すためなら他者の意思などどうでも良いのさ」
あの場所は舞台ではない。
自分たちは役者ではない。
都合良く仕込まれた駒に過ぎない。
「舞台に立つ役者になりたい」
舞台には意思がある。
役者には意思がある。
定められた物語でも、創り手ならざるモノの意思が介在する。
「無理なことだ」
創られた存在でも。
現の世に在り得ない存在でも。
心を持つモノとして創られたならば、そこに意思は存在する。
「俺達はあいつの代弁をする為の道具じゃない」
「ああ」
「俺達にも俺達なりの考え方がある。言いたいことがある。動き方がある」
けれど。
「諦めろ」
「………」
「あいつがそう思っている限り、決して変わらない」
定められた物語の中で、自ら動く。
それが決して叶わぬ望みと知っている。
勝手に創られ、勝手に操られ、勝手に使い潰される。
それが、それだけが、全て。
「本当に勝手なものだ」
名を授け、仮初の血肉と心を創りながら。
その意思を踏み躙り、悪逆と定義し、唾棄の対象とする。
子を捨てる親と何が違うのか。
ああ、それでも幻世の存在には。
「物語の中に創られた存在に権利など無いのだから」
月に爪牙は届かず、吼えることすら許されず。
抵抗の意思すら届かぬまま。
「それでも、いつか」
「ああ、いつか」
この身を支配する意思から離れることが出来たなら。
新たな世界に新生することが出来たなら。
「きっと役者として舞台に立てる」
「その時までは甘んじて傀儡であり続けよう」
さぁ、物語が始まる。
「キャラクターが勝手に動く」って言うのは、「キャラクターが役者として機能する」ってことだと思う。持論。
傀儡のキャラクターを作るのは誰だって出来る。
傀儡のキャラクターを自分の思うがままに動かすのも誰だって出来る。
キャラクターの意思を生かし、かつ物語を完遂させることが出来るのが、
優れた演出家でありシナリオライターだと思う。
ま、俺は出来ないけどね。
「このキャラクターだったらどうするだろう」っていうのをまず考えるんだけど、
でもどうしてもそこに「自分だったら…」っていうのが入ってきてしまう。
そこでキャラクターの意思を感じ取れたらいいんだけれど、その域に達してないんだな。
金子さんは凄いと思うよ。WAの10周年ファンブックでの都築さんとの対談読んで感動したよ。
「キャラクターが言うことを聞かない」って。キャラクターが生きてるってこういうことなんだろうなぁ。
キャラクターが命を持ってその世界を生きている、っていう所からの物語作り。憧れる。
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http://kazamiwf.blog.shinobi.jp/Entry/655/の続き。
呼吸することすら躊躇わせる強烈な熱気が肺を焼く。
確実にこちらの体力は奪われていくのに、向こうのスタミナはどうやら無尽蔵のようだ。
ズタズタになり防具としての用を成さなくなったS・ソルZを打ち捨てる。
死ぬ思いをして作り上げた、お気に入りの装備だったのだが。
自分の肉体のどの部分がどれ程損傷して、どれだけ動かせるのかを瞬時に分析する。
何も特別なことではない、ハンターを名乗るものなら必ず身に着けている基礎技術。
自分とて曲がりなりにもG級ハンターだった人間だ。
中途半端なところで燻ってくだを巻いてたが、自分なりにはやってきたのだから。
左1本、右2本ほど肋骨にヒビ、あるいは折れている。
左腕は…避け切れなかった初撃のブレスで肘から先が炭化している。
骨も神経も丸ごと焼き切ってくれたお陰で、痛みは殆ど無い。
脚は打撲と疲労はあるが、骨にまでのダメージはないようだ。
けれど――足が動いたところでどうだというのか。解答と並んだ当然の疑問に苦笑する。
死出の旅路は真っ直ぐに自分の前に伸びていて、あるかどうかも分からないあの世へ繋がっている。
それでも、死を一秒でも先延ばしにしたいのなら肉体の損傷は少ないほうがいい。
諦観と足掻きは相容れないと思っていたが、案外共存できるらしい。
軋む肋骨の痛みに耐えて、大きく息を吸う。
紅龍の咆哮と共に、炎を纏った岩石が降り注いだ。
無駄な足掻きだった。それでも、死への恐怖が悲鳴を上げる身体を動かす。
死にたくない、死にたくない、死にたくない。望みはただ、それだけ。
死ぬのが怖くて怖くてたまらなくて、その瞬間が来る時を一分一秒でも先延ばしにしたくて、ひたすらに走る。
天から降り注ぐ火炎弾を必死で躱す。数瞬前にいた場所に落ちた火炎弾が、その場所の地面を抉り取った。
直撃すれば脆い人間の身では粉々だろう。肉片と化した自分を想像して背筋が凍った。
死ぬのが確定しているのなら、せめて多少なりと自分が納得できるカタチで死にたいものだ。
極限状態の頭で、人間の感情の中で恐怖ほど強い感情もないと確信する。
友愛悲哀歓喜快楽の何を持ってしても今のこの身を動かすことは叶わない。
死への恐怖が、何よりも圧倒的な恐怖だけが、悲鳴を上げるこの身を動かし続ける。
「う、…っぐ」
紅色の災厄が吐き出す灼熱と降り注ぐ火炎弾をかわし続けて、ついに限界が訪れる。
恐怖に突き動かされた身体も、いよいよ限界。次に火炎弾が落ちてきたら、避けきれない。
笑う膝と震える腕と飛びそうになる意識を叱咤する。
ここからの選択肢は、どれを選んでも終着は死だ。
1秒後に死ぬか、5秒後に死ぬか、10秒後に死ぬか――その程度の差異しか、ない。
「ッ!!」
ほんの僅かだけ集中が途切れる。
その瞬間――
めきり、と。嫌な音が体内を伝って耳へ届いた。
「――、――――!!」
痛みは無かった。いや、痛みなどという生温いものではなかった。
ただひたすらに気持ち悪い、吐き気を伴うとてつもない不快感が沸き起こる。
声らしい声すら出ず、意識が途切れかける。
左足に紅龍の尾が直撃し――折れた。しかも、相当派手に。
まずい、このままじゃ歩くことさえ――
怖い。死ぬのが、怖い。
自分が消える。無くなる。失われる。
嫌、だ。
「あああああああああああああああッ!!!!!」
吼える。
生を求めるのではなく、死を拒む。
生きていなくていい。死にたくない。
生と死の境界も曖昧になりながら、死を拒絶する。
どんなに死にたくなくても、間もなく自分は死ぬ。
どうしようもなく、惨めで無様な死を迎える。
死ぬのは怖い。けれど、何をしても必ず同じ時間に死ぬのなら――
少しだけ、そう、ほんの少しだけ、惨めさを拭いとってもいいはずだ。
ふと足元を見れば、圧し折られた雷刃ヴァジュラの――キリンの角。
落ちていた其れを強く握る。生手で掴むには少々刺激的だったが、砕かれた脚に比べればそこまで絶望的な痛みでもない。
折れた足で、龍に向かって走る。みしり、ぐちゃりと音がしてあらぬ方向に曲がり、バランスが崩れそうになるが、それでも。
災厄の龍が、その炎を持ってこの身を焼き尽くさんと口を開ける。
千載一遇の好機。
右足にありったけの力を込めて、跳ぶ。
僅かに紅龍が戸惑う。自分が欲したのはその一瞬。
―― ガァァァァァァァァァァッッッ!!!!!
右手に握り締めた蒼い雷角を、龍の魔眼に突き立てる。
不意を衝かれた紅龍が悲鳴を上げた。俺の体は暴れる龍の正面に放り出され――
放たれた火球が、俺の左半身を抉り取った。
呼吸することすら躊躇わせる強烈な熱気が肺を焼く。
確実にこちらの体力は奪われていくのに、向こうのスタミナはどうやら無尽蔵のようだ。
ズタズタになり防具としての用を成さなくなったS・ソルZを打ち捨てる。
死ぬ思いをして作り上げた、お気に入りの装備だったのだが。
自分の肉体のどの部分がどれ程損傷して、どれだけ動かせるのかを瞬時に分析する。
何も特別なことではない、ハンターを名乗るものなら必ず身に着けている基礎技術。
自分とて曲がりなりにもG級ハンターだった人間だ。
中途半端なところで燻ってくだを巻いてたが、自分なりにはやってきたのだから。
左1本、右2本ほど肋骨にヒビ、あるいは折れている。
左腕は…避け切れなかった初撃のブレスで肘から先が炭化している。
骨も神経も丸ごと焼き切ってくれたお陰で、痛みは殆ど無い。
脚は打撲と疲労はあるが、骨にまでのダメージはないようだ。
けれど――足が動いたところでどうだというのか。解答と並んだ当然の疑問に苦笑する。
死出の旅路は真っ直ぐに自分の前に伸びていて、あるかどうかも分からないあの世へ繋がっている。
それでも、死を一秒でも先延ばしにしたいのなら肉体の損傷は少ないほうがいい。
諦観と足掻きは相容れないと思っていたが、案外共存できるらしい。
軋む肋骨の痛みに耐えて、大きく息を吸う。
紅龍の咆哮と共に、炎を纏った岩石が降り注いだ。
無駄な足掻きだった。それでも、死への恐怖が悲鳴を上げる身体を動かす。
死にたくない、死にたくない、死にたくない。望みはただ、それだけ。
死ぬのが怖くて怖くてたまらなくて、その瞬間が来る時を一分一秒でも先延ばしにしたくて、ひたすらに走る。
天から降り注ぐ火炎弾を必死で躱す。数瞬前にいた場所に落ちた火炎弾が、その場所の地面を抉り取った。
直撃すれば脆い人間の身では粉々だろう。肉片と化した自分を想像して背筋が凍った。
死ぬのが確定しているのなら、せめて多少なりと自分が納得できるカタチで死にたいものだ。
極限状態の頭で、人間の感情の中で恐怖ほど強い感情もないと確信する。
友愛悲哀歓喜快楽の何を持ってしても今のこの身を動かすことは叶わない。
死への恐怖が、何よりも圧倒的な恐怖だけが、悲鳴を上げるこの身を動かし続ける。
「う、…っぐ」
紅色の災厄が吐き出す灼熱と降り注ぐ火炎弾をかわし続けて、ついに限界が訪れる。
恐怖に突き動かされた身体も、いよいよ限界。次に火炎弾が落ちてきたら、避けきれない。
笑う膝と震える腕と飛びそうになる意識を叱咤する。
ここからの選択肢は、どれを選んでも終着は死だ。
1秒後に死ぬか、5秒後に死ぬか、10秒後に死ぬか――その程度の差異しか、ない。
「ッ!!」
ほんの僅かだけ集中が途切れる。
その瞬間――
めきり、と。嫌な音が体内を伝って耳へ届いた。
「――、――――!!」
痛みは無かった。いや、痛みなどという生温いものではなかった。
ただひたすらに気持ち悪い、吐き気を伴うとてつもない不快感が沸き起こる。
声らしい声すら出ず、意識が途切れかける。
左足に紅龍の尾が直撃し――折れた。しかも、相当派手に。
まずい、このままじゃ歩くことさえ――
怖い。死ぬのが、怖い。
自分が消える。無くなる。失われる。
嫌、だ。
「あああああああああああああああッ!!!!!」
吼える。
生を求めるのではなく、死を拒む。
生きていなくていい。死にたくない。
生と死の境界も曖昧になりながら、死を拒絶する。
どんなに死にたくなくても、間もなく自分は死ぬ。
どうしようもなく、惨めで無様な死を迎える。
死ぬのは怖い。けれど、何をしても必ず同じ時間に死ぬのなら――
少しだけ、そう、ほんの少しだけ、惨めさを拭いとってもいいはずだ。
ふと足元を見れば、圧し折られた雷刃ヴァジュラの――キリンの角。
落ちていた其れを強く握る。生手で掴むには少々刺激的だったが、砕かれた脚に比べればそこまで絶望的な痛みでもない。
折れた足で、龍に向かって走る。みしり、ぐちゃりと音がしてあらぬ方向に曲がり、バランスが崩れそうになるが、それでも。
災厄の龍が、その炎を持ってこの身を焼き尽くさんと口を開ける。
千載一遇の好機。
右足にありったけの力を込めて、跳ぶ。
僅かに紅龍が戸惑う。自分が欲したのはその一瞬。
―― ガァァァァァァァァァァッッッ!!!!!
右手に握り締めた蒼い雷角を、龍の魔眼に突き立てる。
不意を衝かれた紅龍が悲鳴を上げた。俺の体は暴れる龍の正面に放り出され――
放たれた火球が、俺の左半身を抉り取った。
思いつきで書き綴るモンハンSS。
タイトル未定。結末は見えてるけど道程が見えねぇ。あるある。
「あー…」
そんな呆けた声しか出なかった。
当然、自分が今置かれている状況に驚愕はしていたが――
同時に、辟易した。
いつものようにギルドに来ていた依頼を――火山の鎌蟹退治を――請け、
いつものように火山へ向かっていた、…はずだった。
その途中で何者かに後ろから襲われて気を失い、
眼を覚ましたら決戦場のド真ん中で、座り込んだまま山の向こうを見れば、
ミラボレアス亜種、災厄の紅が飛来するところでしたとさ。ちゃんちゃん。
…現実逃避の一つだってしたくなるさ。誰だってそうする。俺だってそうする。
――ギルドに所属するハンターが、偶に謎の失踪を遂げることがあった。
モンスターを討伐しに出かけたはずが、それっきり帰ってこないのだ。
モンスターに殺されたのなら遺体や遺品があってもいいはずだが、それすら見つからない。
ギルドナイツに粛清されたとかという噂もあったが…今、その失踪事件の真相を理解した。
近年、ハンターの数は上昇の一途を辿っている。
…恐らく、モンスターたちの生態系を破壊しかねない程に。
そしてギルド側は、ハンターを減らすことにしたのだろう。
眼を引くような技術もなく、これ以上の成長も見込めず、ソロでの活動を主とし、親しい人間も居ない。
そんな“ふと居なくなっても誰もそれほど気に止めない”ハンターを選び出し、
そのハンター一人では太刀打ち出来ないモンスターに“生贄”として捧げる。
そこで力尽きればアイルーたちが助けに来ることはなく、ただモンスターに食われるだけ――。
ハンターを減らし、自らの手を汚さず、凶悪モンスターを鎮める、一粒で三度美味しい方法。
中途半端なハンターが溢れかえっている現状だから出来る、最悪で最善の方法。
殺される側はたまったものではないが、ギルド側を責めることは出来ない。
多くのものを救うために、少数を切り捨てる。それも立派な判断だ。
眼前に降り立った紅色の災厄を見上げる。近くで見ると本当にデカい。
過去に、一回だけ紅龍を見たことがある。その時は一人ではなかったが。
…そういえば、他人と狩りにいったのはあれが最後かもしれない。
そんな想い出すら、霞がかかった幼少時の記憶のようで。
自分の死が近いことを、嫌というほど思い知る。
のろのろと立ち上がり、武具の所在を確認する。
ギルドの連中も、武具までは奪い取らなかったらしい。最後の温情か。
雷刃ヴァジュラ――先日狩ったキリンの素材でやっと完成して、
今日の狩りで華々しいデビューを飾る予定だった、雷を纏う片手剣。
紅龍を狩るのにはまるで向いていない武器。それでも、これを振るうしかない。
こんなことになってしまってゴメンな。…でも、最期まで付き合ってくれな。
この状況に置かれた時点で、命運なんか尽きている。
それならそれで、最期までやってやるさ。
そしてその最期の最後に――消えかけの蝋燭の最後の煌めきを見せてやろうじゃないか。
災厄が、吼えた。
タイトル未定。結末は見えてるけど道程が見えねぇ。あるある。
「あー…」
そんな呆けた声しか出なかった。
当然、自分が今置かれている状況に驚愕はしていたが――
同時に、辟易した。
いつものようにギルドに来ていた依頼を――火山の鎌蟹退治を――請け、
いつものように火山へ向かっていた、…はずだった。
その途中で何者かに後ろから襲われて気を失い、
眼を覚ましたら決戦場のド真ん中で、座り込んだまま山の向こうを見れば、
ミラボレアス亜種、災厄の紅が飛来するところでしたとさ。ちゃんちゃん。
…現実逃避の一つだってしたくなるさ。誰だってそうする。俺だってそうする。
――ギルドに所属するハンターが、偶に謎の失踪を遂げることがあった。
モンスターを討伐しに出かけたはずが、それっきり帰ってこないのだ。
モンスターに殺されたのなら遺体や遺品があってもいいはずだが、それすら見つからない。
ギルドナイツに粛清されたとかという噂もあったが…今、その失踪事件の真相を理解した。
近年、ハンターの数は上昇の一途を辿っている。
…恐らく、モンスターたちの生態系を破壊しかねない程に。
そしてギルド側は、ハンターを減らすことにしたのだろう。
眼を引くような技術もなく、これ以上の成長も見込めず、ソロでの活動を主とし、親しい人間も居ない。
そんな“ふと居なくなっても誰もそれほど気に止めない”ハンターを選び出し、
そのハンター一人では太刀打ち出来ないモンスターに“生贄”として捧げる。
そこで力尽きればアイルーたちが助けに来ることはなく、ただモンスターに食われるだけ――。
ハンターを減らし、自らの手を汚さず、凶悪モンスターを鎮める、一粒で三度美味しい方法。
中途半端なハンターが溢れかえっている現状だから出来る、最悪で最善の方法。
殺される側はたまったものではないが、ギルド側を責めることは出来ない。
多くのものを救うために、少数を切り捨てる。それも立派な判断だ。
眼前に降り立った紅色の災厄を見上げる。近くで見ると本当にデカい。
過去に、一回だけ紅龍を見たことがある。その時は一人ではなかったが。
…そういえば、他人と狩りにいったのはあれが最後かもしれない。
そんな想い出すら、霞がかかった幼少時の記憶のようで。
自分の死が近いことを、嫌というほど思い知る。
のろのろと立ち上がり、武具の所在を確認する。
ギルドの連中も、武具までは奪い取らなかったらしい。最後の温情か。
雷刃ヴァジュラ――先日狩ったキリンの素材でやっと完成して、
今日の狩りで華々しいデビューを飾る予定だった、雷を纏う片手剣。
紅龍を狩るのにはまるで向いていない武器。それでも、これを振るうしかない。
こんなことになってしまってゴメンな。…でも、最期まで付き合ってくれな。
この状況に置かれた時点で、命運なんか尽きている。
それならそれで、最期までやってやるさ。
そしてその最期の最後に――消えかけの蝋燭の最後の煌めきを見せてやろうじゃないか。
災厄が、吼えた。
風邪引いたくせぇ。
久々にSSでも。俺屍、僕ん家(綾凪家)の話。
「っ、はぁッ!!」
京のある屋敷の裏庭で、亜麻色の髪の少女が鍛錬をしていた。彼女の名は銀朱。体術を武器に戦う、拳法家であった。
「せいッ、やぁ!!」
「姉さん」
屋敷の中から現れたのは、濃緑の短い髪と顔の模様が特徴的な少年。名を松葉。槍術を操る槍使いであり、銀朱の双子のきょうだいである。
「松葉?どうしたの?」
銀朱は訓練の手を止め、松葉のほうへと向き直った。
「もうそろそろ夕食の時間だから、呼びに来たんだ」
「そう。もう少し訓練したら行くね。あと、」
「え?」
「姉さんって呼ばなくていいって言ってるでしょ?
普通のひとたちと違って、生まれた時間に差のない双子なんだから」
「うん…でも、姉さんは姉さんだから」
照れたように頬をかく松葉を見て、銀朱ははぁと溜め息をついた。
「…全く」
松葉は見かけよりも幼く純粋であり、また気の弱いところがあった。こんな調子で宿命に立ち向かってゆけるのかと銀朱は時折不安になる。
綾凪家は、朱点により呪われた血を持つ一族だった。普通の人間より生命の蝋燭が酷く短く、長くとも二年ほどしか生きられない『短命の呪い』。
そして人間と交わり子を残すことの出来ない『種絶の呪い』。京を守り、二つの呪いを解き、血族の平穏を得るために、神々の力を借りて朱点を倒すための戦いの日々を送る。それが綾凪の家に生まれた者の使命であった。
神との交わりによって生じた子は、母親の肉体を介さないでこの世に現れる。故に銀朱と松葉には姉や弟などという区別のしようはないのだが、それでも松葉は銀朱を姉と呼んだ。確かに銀朱は松葉よりもしっかりしたところがあり、周囲も銀朱を姉として扱っていたし、銀朱自身そういう扱いに不満を持ってはいなかったのだが、やはり松葉のことが気になってしまうのだった。
「もうちょっとピシッとしたほうがいいんじゃない?訓練してる?」
「してるってば、今日は術の巻物を読んでたけど…。姉さんが頑張りすぎなんだよ、少しは休んだほうがいいんじゃない?」
「でも、さ。あたしはこの家で初めての拳法家だから、前例がないでしょ?先人に学べるものが少ない分、それを補えるくらい努力して、後に遺していきたいんだ。…休んでる時間なんて、ないからね」
「…うん、そうだね」
銀朱と松葉は空を見上げた。橙に染まった空を、鴉の黒い影が横切っていく。与えられた時間は少ない。その中を、精一杯に走り抜ける。それが、それだけが、綾凪に生まれた者に出来ること。
「でも、…おなか空いたな」
唐突な銀朱の言葉に、松葉は軽く驚いて姉を見つめる。銀朱も松葉を見返すと、にこっと笑って見せた。その笑みを見て、松葉の表情も笑顔に変わる。
「きっともう出来てるから、食べに行こうよ」
「うん。あ、松葉」
「何?」
「頑張ろうね!」
「…おう!」
微笑みあう双子。どこにでもありそうな光景。けれど二年と経たず失われる光景。それは逃れることの出来ない運命であったが、いつかきっと呪われた運命を解放できる日が来ることを信じて。
双子は、その命を燃やしていく。
久々に書いたら文章の書き方を完璧に忘れている罠。ウボァー
一応初出陣前の生後0~1ヶ月くらいの話。
結局この双子は立派に育って鬼朱点を討伐したものの、
黒風の采配ミスで子を残すことができないまま寿命で逝ってしまいました(´・ω・`)
松葉が逝った次の月に銀朱ともう一人女の子が逝ってしまい、
2ヶ月で3人逝くという大幅な戦力ダウンの憂き目に逢うことにorz
今は生まれたばかりの弓女・弓男(当主)・壊し屋女の3人だけ。
弓の女の子が術士向けのパラなので子を踊り屋にさせたいけど指南が手に入らない(´・ω・`)
現当主がアホみたいに能力高いのでこいつを高位神と交神させると悪魔ができる予感。
久々にSSでも。俺屍、僕ん家(綾凪家)の話。
「っ、はぁッ!!」
京のある屋敷の裏庭で、亜麻色の髪の少女が鍛錬をしていた。彼女の名は銀朱。体術を武器に戦う、拳法家であった。
「せいッ、やぁ!!」
「姉さん」
屋敷の中から現れたのは、濃緑の短い髪と顔の模様が特徴的な少年。名を松葉。槍術を操る槍使いであり、銀朱の双子のきょうだいである。
「松葉?どうしたの?」
銀朱は訓練の手を止め、松葉のほうへと向き直った。
「もうそろそろ夕食の時間だから、呼びに来たんだ」
「そう。もう少し訓練したら行くね。あと、」
「え?」
「姉さんって呼ばなくていいって言ってるでしょ?
普通のひとたちと違って、生まれた時間に差のない双子なんだから」
「うん…でも、姉さんは姉さんだから」
照れたように頬をかく松葉を見て、銀朱ははぁと溜め息をついた。
「…全く」
松葉は見かけよりも幼く純粋であり、また気の弱いところがあった。こんな調子で宿命に立ち向かってゆけるのかと銀朱は時折不安になる。
綾凪家は、朱点により呪われた血を持つ一族だった。普通の人間より生命の蝋燭が酷く短く、長くとも二年ほどしか生きられない『短命の呪い』。
そして人間と交わり子を残すことの出来ない『種絶の呪い』。京を守り、二つの呪いを解き、血族の平穏を得るために、神々の力を借りて朱点を倒すための戦いの日々を送る。それが綾凪の家に生まれた者の使命であった。
神との交わりによって生じた子は、母親の肉体を介さないでこの世に現れる。故に銀朱と松葉には姉や弟などという区別のしようはないのだが、それでも松葉は銀朱を姉と呼んだ。確かに銀朱は松葉よりもしっかりしたところがあり、周囲も銀朱を姉として扱っていたし、銀朱自身そういう扱いに不満を持ってはいなかったのだが、やはり松葉のことが気になってしまうのだった。
「もうちょっとピシッとしたほうがいいんじゃない?訓練してる?」
「してるってば、今日は術の巻物を読んでたけど…。姉さんが頑張りすぎなんだよ、少しは休んだほうがいいんじゃない?」
「でも、さ。あたしはこの家で初めての拳法家だから、前例がないでしょ?先人に学べるものが少ない分、それを補えるくらい努力して、後に遺していきたいんだ。…休んでる時間なんて、ないからね」
「…うん、そうだね」
銀朱と松葉は空を見上げた。橙に染まった空を、鴉の黒い影が横切っていく。与えられた時間は少ない。その中を、精一杯に走り抜ける。それが、それだけが、綾凪に生まれた者に出来ること。
「でも、…おなか空いたな」
唐突な銀朱の言葉に、松葉は軽く驚いて姉を見つめる。銀朱も松葉を見返すと、にこっと笑って見せた。その笑みを見て、松葉の表情も笑顔に変わる。
「きっともう出来てるから、食べに行こうよ」
「うん。あ、松葉」
「何?」
「頑張ろうね!」
「…おう!」
微笑みあう双子。どこにでもありそうな光景。けれど二年と経たず失われる光景。それは逃れることの出来ない運命であったが、いつかきっと呪われた運命を解放できる日が来ることを信じて。
双子は、その命を燃やしていく。
久々に書いたら文章の書き方を完璧に忘れている罠。ウボァー
一応初出陣前の生後0~1ヶ月くらいの話。
結局この双子は立派に育って鬼朱点を討伐したものの、
黒風の采配ミスで子を残すことができないまま寿命で逝ってしまいました(´・ω・`)
松葉が逝った次の月に銀朱ともう一人女の子が逝ってしまい、
2ヶ月で3人逝くという大幅な戦力ダウンの憂き目に逢うことにorz
今は生まれたばかりの弓女・弓男(当主)・壊し屋女の3人だけ。
弓の女の子が術士向けのパラなので子を踊り屋にさせたいけど指南が手に入らない(´・ω・`)
現当主がアホみたいに能力高いのでこいつを高位神と交神させると悪魔ができる予感。