傷つくのは嫌 苦しむのは嫌 だから俺は心配されたくない

自転車で転んだ子供がいた。
膝から赤い血が流れて止まらなかった。
家に帰って親に見せた。
親は顔色一つ変えずに汚いから洗ってこいと言った。
怪我の痛みは慣れっこだった。
代わりに痛覚神経の通っていないはずの部分が痛かった。
子供は傷に水をかけながら泣いた。
子供が望んだのはたった一つの言葉だった。

『大丈夫？』と問う、言葉だけだった。

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ミスフル最終巻読んだあとにバンプの『ギルド』聞いて
激欝になってボロ泣きするのは俺だけでいい。

母が訪れた。

髪を染めてくれ。買い物に付き合ってくれ。飯食いに行こう。
乗り気じゃなかった。なるわけがない。
せっかくの休日。ゲームと睡眠に費やしたい。
でも拒絶はしなかった。できるわけがない。

知っている。自分を心配していることを。
それは病の子に向ける懺悔にも似た愛情。
患ったモノの様子を見に来るのだ。分かっている。
それに縋るしかない俺も相当終わっている。

何より拒絶できないようにプログラムが組まれている。俺の脳に。
彼女がそれを知るはずもない。知りようもない。
それは両親が無意識のうちに子に組み込んだプログラム。
消去すれば本体に異常が生じる、OSに組み込まれたプログラム。

馬鹿な親だ。全ては手遅れなのだと気付かない。
知らず知らず埋め込まれたソレは、何もかもを壊した。
そう、修復不可能なほどに。

恨むことなど簡単だ。しかしそれは非許可事項に指定されている。
恨みたくても恨めない。行き場のない感情は異常を喚起する。
自らの異常から身を護る術が必要になった。

ファイアウォールを全力で展開。他からの干渉を拒絶。
周囲へ向ける憎悪を自分への呪詛へ変換。
それこそが俺が開発した自己防衛策。

心配されるのは嫌だ。
迷惑をかけるのは嫌だ。
嫌な思いをさせるのは嫌だ。
そう言えば、こう言われる。『優しいね』と。

優しいわけじゃない。
ただ自分が傷つくのが嫌なだけだ。
心配されるのも迷惑をかけるのも嫌な思いをさせるのも、俺が嫌なのだ。
誰が何と言おうと、その全ては俺を少なからず傷つける。

タガが外れれば、吐き出したものが他人を不愉快にする。
そうやっていくつの関係を壊してきたのだろう。
もう数えるのも馬鹿馬鹿しい。

お前は病気じゃないと言った奴がいた。
間違ってはいない。
何故同じことで何度も悩むのだと問うた奴がいた。
俺も知りたい。
不幸な振りをしたいだけだろうと言った奴がいた。
否定はしない。
メンヘラ馬鹿すぎワロスｗと言った奴がいた。
その通りだよ。

普通の人間は、こんなことでは悩まない。
悩んだとしても、病院になどかからない。
俺は病気ではないのだろう。
ただ、マトモじゃないだけで。

何度でも同じことで悩むのに、同じ場所には二度と相談できない。
迷惑だから。心配させるから。嫌な思いをさせるから。
それを教えてくれてありがとう。
俺はお前たちにはあれ以降相談してないよな。
お前たちに嫌な思いをさせていないよな。
もう相談できる場所は使い尽くしてしまったけど。
また同じことで悩んでるけど。
大丈夫、気にしないで。平気だから。

不幸な振りをしたかっただけだ。
それしか他者の気を引く方法を知らなかった。
負のレッテル。

俺がメンヘラなら、世のメンヘラは全員自殺してるな。

もう、俺が何を言ったって、言い訳にしか聞こえない。
それは、よく分かっている。

一貫性がない。
普遍性さえない。
誰に理解できる？
親をして『こっちの気が狂いそうだからやめてくれ』と言われたこの思考を。

救いはない。希望など廃れた。
さぁ笑え。
無様だと、嘲り笑え。