ゆめ。

夢なんてのは起きて数分もすれば綺麗に忘れてしまっているモノだ。
それでも脳にこびりついてはなれない夢ってのはある。忌々しいほどに。

・満月の夜。一面の水の上に立つ。月から零れるきらきらの粉。粉に触れた部分の肉体が消えていく。
　…幻想的な『夢』極まりない夢。
　…この夢が何を示しているのかは今もって分からない。
　…空想に縋る自分への警告？

・嘲笑う声。見下す視線。影のような人物に「さあ、眼を覚ませ」と言われる。
　…肺炎で40度の熱を出したときに見た夢。この二日後入院。
　…無駄に自分を振り返る時間が出来てしまった俺は、退院と同時に数人の友人と縁を切った。
　…友人がたくさんいる幸せな生活という『夢』から醒めるという暗示だったのだろうか。

・大きなデパート。小学生の自分。上の弟（幼稚園児程度）の手を引いて走る。
父親が追いかけてくる。捕まると殺される。泣きじゃくる弟。自分も泣きたいけど我慢する。
他の人たちに助けを求めるも聞き入れてもらえない。「あの人がそんなことするはずが無い」
母親と下の弟は別のところに遊びに行っている。誰にも助けてもらえない絶望の中逃げ惑う。
　…細かいところまではっきりと覚えている。デパートの構造も恐怖感も絶望感も。
　…目が覚めたら全力疾走した後のように疲労困憊し、酷い汗だった。
　…親は害為すもの。兄弟は枷となるもの。他者は見捨てるもの。今の俺の原光景とも言える。

・小学校と中学校をあわせたような学校。手には武器（場面によって刃物だったり鉄の棒だったり）。
溢れかえるかつて自分を苦しめた人間たち。殺す。殺す。殺す。抉る。嬲る。殺す。
救命を懇願する目線。愉悦と快楽。殺す。殺す。山ほど殺してもまだ足りずに殺し続ける。
　…目覚めた時、とても残念だった。
　…おそらく絶望の夢と対になる希望の夢。
　…この夢が現実になることを願ってやまない。