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http://kazamiwf.blog.shinobi.jp/Entry/655/の続き。
呼吸することすら躊躇わせる強烈な熱気が肺を焼く。
確実にこちらの体力は奪われていくのに、向こうのスタミナはどうやら無尽蔵のようだ。
ズタズタになり防具としての用を成さなくなったS・ソルZを打ち捨てる。
死ぬ思いをして作り上げた、お気に入りの装備だったのだが。
自分の肉体のどの部分がどれ程損傷して、どれだけ動かせるのかを瞬時に分析する。
何も特別なことではない、ハンターを名乗るものなら必ず身に着けている基礎技術。
自分とて曲がりなりにもG級ハンターだった人間だ。
中途半端なところで燻ってくだを巻いてたが、自分なりにはやってきたのだから。
左1本、右2本ほど肋骨にヒビ、あるいは折れている。
左腕は…避け切れなかった初撃のブレスで肘から先が炭化している。
骨も神経も丸ごと焼き切ってくれたお陰で、痛みは殆ど無い。
脚は打撲と疲労はあるが、骨にまでのダメージはないようだ。
けれど――足が動いたところでどうだというのか。解答と並んだ当然の疑問に苦笑する。
死出の旅路は真っ直ぐに自分の前に伸びていて、あるかどうかも分からないあの世へ繋がっている。
それでも、死を一秒でも先延ばしにしたいのなら肉体の損傷は少ないほうがいい。
諦観と足掻きは相容れないと思っていたが、案外共存できるらしい。
軋む肋骨の痛みに耐えて、大きく息を吸う。
紅龍の咆哮と共に、炎を纏った岩石が降り注いだ。
無駄な足掻きだった。それでも、死への恐怖が悲鳴を上げる身体を動かす。
死にたくない、死にたくない、死にたくない。望みはただ、それだけ。
死ぬのが怖くて怖くてたまらなくて、その瞬間が来る時を一分一秒でも先延ばしにしたくて、ひたすらに走る。
天から降り注ぐ火炎弾を必死で躱す。数瞬前にいた場所に落ちた火炎弾が、その場所の地面を抉り取った。
直撃すれば脆い人間の身では粉々だろう。肉片と化した自分を想像して背筋が凍った。
死ぬのが確定しているのなら、せめて多少なりと自分が納得できるカタチで死にたいものだ。
極限状態の頭で、人間の感情の中で恐怖ほど強い感情もないと確信する。
友愛悲哀歓喜快楽の何を持ってしても今のこの身を動かすことは叶わない。
死への恐怖が、何よりも圧倒的な恐怖だけが、悲鳴を上げるこの身を動かし続ける。
「う、…っぐ」
紅色の災厄が吐き出す灼熱と降り注ぐ火炎弾をかわし続けて、ついに限界が訪れる。
恐怖に突き動かされた身体も、いよいよ限界。次に火炎弾が落ちてきたら、避けきれない。
笑う膝と震える腕と飛びそうになる意識を叱咤する。
ここからの選択肢は、どれを選んでも終着は死だ。
1秒後に死ぬか、5秒後に死ぬか、10秒後に死ぬか――その程度の差異しか、ない。
「ッ!!」
ほんの僅かだけ集中が途切れる。
その瞬間――
めきり、と。嫌な音が体内を伝って耳へ届いた。
「――、――――!!」
痛みは無かった。いや、痛みなどという生温いものではなかった。
ただひたすらに気持ち悪い、吐き気を伴うとてつもない不快感が沸き起こる。
声らしい声すら出ず、意識が途切れかける。
左足に紅龍の尾が直撃し――折れた。しかも、相当派手に。
まずい、このままじゃ歩くことさえ――
怖い。死ぬのが、怖い。
自分が消える。無くなる。失われる。
嫌、だ。
「あああああああああああああああッ!!!!!」
吼える。
生を求めるのではなく、死を拒む。
生きていなくていい。死にたくない。
生と死の境界も曖昧になりながら、死を拒絶する。
どんなに死にたくなくても、間もなく自分は死ぬ。
どうしようもなく、惨めで無様な死を迎える。
死ぬのは怖い。けれど、何をしても必ず同じ時間に死ぬのなら――
少しだけ、そう、ほんの少しだけ、惨めさを拭いとってもいいはずだ。
ふと足元を見れば、圧し折られた雷刃ヴァジュラの――キリンの角。
落ちていた其れを強く握る。生手で掴むには少々刺激的だったが、砕かれた脚に比べればそこまで絶望的な痛みでもない。
折れた足で、龍に向かって走る。みしり、ぐちゃりと音がしてあらぬ方向に曲がり、バランスが崩れそうになるが、それでも。
災厄の龍が、その炎を持ってこの身を焼き尽くさんと口を開ける。
千載一遇の好機。
右足にありったけの力を込めて、跳ぶ。
僅かに紅龍が戸惑う。自分が欲したのはその一瞬。
―― ガァァァァァァァァァァッッッ!!!!!
右手に握り締めた蒼い雷角を、龍の魔眼に突き立てる。
不意を衝かれた紅龍が悲鳴を上げた。俺の体は暴れる龍の正面に放り出され――
放たれた火球が、俺の左半身を抉り取った。
呼吸することすら躊躇わせる強烈な熱気が肺を焼く。
確実にこちらの体力は奪われていくのに、向こうのスタミナはどうやら無尽蔵のようだ。
ズタズタになり防具としての用を成さなくなったS・ソルZを打ち捨てる。
死ぬ思いをして作り上げた、お気に入りの装備だったのだが。
自分の肉体のどの部分がどれ程損傷して、どれだけ動かせるのかを瞬時に分析する。
何も特別なことではない、ハンターを名乗るものなら必ず身に着けている基礎技術。
自分とて曲がりなりにもG級ハンターだった人間だ。
中途半端なところで燻ってくだを巻いてたが、自分なりにはやってきたのだから。
左1本、右2本ほど肋骨にヒビ、あるいは折れている。
左腕は…避け切れなかった初撃のブレスで肘から先が炭化している。
骨も神経も丸ごと焼き切ってくれたお陰で、痛みは殆ど無い。
脚は打撲と疲労はあるが、骨にまでのダメージはないようだ。
けれど――足が動いたところでどうだというのか。解答と並んだ当然の疑問に苦笑する。
死出の旅路は真っ直ぐに自分の前に伸びていて、あるかどうかも分からないあの世へ繋がっている。
それでも、死を一秒でも先延ばしにしたいのなら肉体の損傷は少ないほうがいい。
諦観と足掻きは相容れないと思っていたが、案外共存できるらしい。
軋む肋骨の痛みに耐えて、大きく息を吸う。
紅龍の咆哮と共に、炎を纏った岩石が降り注いだ。
無駄な足掻きだった。それでも、死への恐怖が悲鳴を上げる身体を動かす。
死にたくない、死にたくない、死にたくない。望みはただ、それだけ。
死ぬのが怖くて怖くてたまらなくて、その瞬間が来る時を一分一秒でも先延ばしにしたくて、ひたすらに走る。
天から降り注ぐ火炎弾を必死で躱す。数瞬前にいた場所に落ちた火炎弾が、その場所の地面を抉り取った。
直撃すれば脆い人間の身では粉々だろう。肉片と化した自分を想像して背筋が凍った。
死ぬのが確定しているのなら、せめて多少なりと自分が納得できるカタチで死にたいものだ。
極限状態の頭で、人間の感情の中で恐怖ほど強い感情もないと確信する。
友愛悲哀歓喜快楽の何を持ってしても今のこの身を動かすことは叶わない。
死への恐怖が、何よりも圧倒的な恐怖だけが、悲鳴を上げるこの身を動かし続ける。
「う、…っぐ」
紅色の災厄が吐き出す灼熱と降り注ぐ火炎弾をかわし続けて、ついに限界が訪れる。
恐怖に突き動かされた身体も、いよいよ限界。次に火炎弾が落ちてきたら、避けきれない。
笑う膝と震える腕と飛びそうになる意識を叱咤する。
ここからの選択肢は、どれを選んでも終着は死だ。
1秒後に死ぬか、5秒後に死ぬか、10秒後に死ぬか――その程度の差異しか、ない。
「ッ!!」
ほんの僅かだけ集中が途切れる。
その瞬間――
めきり、と。嫌な音が体内を伝って耳へ届いた。
「――、――――!!」
痛みは無かった。いや、痛みなどという生温いものではなかった。
ただひたすらに気持ち悪い、吐き気を伴うとてつもない不快感が沸き起こる。
声らしい声すら出ず、意識が途切れかける。
左足に紅龍の尾が直撃し――折れた。しかも、相当派手に。
まずい、このままじゃ歩くことさえ――
怖い。死ぬのが、怖い。
自分が消える。無くなる。失われる。
嫌、だ。
「あああああああああああああああッ!!!!!」
吼える。
生を求めるのではなく、死を拒む。
生きていなくていい。死にたくない。
生と死の境界も曖昧になりながら、死を拒絶する。
どんなに死にたくなくても、間もなく自分は死ぬ。
どうしようもなく、惨めで無様な死を迎える。
死ぬのは怖い。けれど、何をしても必ず同じ時間に死ぬのなら――
少しだけ、そう、ほんの少しだけ、惨めさを拭いとってもいいはずだ。
ふと足元を見れば、圧し折られた雷刃ヴァジュラの――キリンの角。
落ちていた其れを強く握る。生手で掴むには少々刺激的だったが、砕かれた脚に比べればそこまで絶望的な痛みでもない。
折れた足で、龍に向かって走る。みしり、ぐちゃりと音がしてあらぬ方向に曲がり、バランスが崩れそうになるが、それでも。
災厄の龍が、その炎を持ってこの身を焼き尽くさんと口を開ける。
千載一遇の好機。
右足にありったけの力を込めて、跳ぶ。
僅かに紅龍が戸惑う。自分が欲したのはその一瞬。
―― ガァァァァァァァァァァッッッ!!!!!
右手に握り締めた蒼い雷角を、龍の魔眼に突き立てる。
不意を衝かれた紅龍が悲鳴を上げた。俺の体は暴れる龍の正面に放り出され――
放たれた火球が、俺の左半身を抉り取った。
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